マイク・モレノが決して使わないヴォイシング

マイク・モレノが非常に面白いことを言っている記事を読みました。

Jazz Life 10月号に掲載されている “Mike Moreno Guitar Workshop” という記事 (p.45) です。この中でモレノは「コード関連の教則本を開くと、メジャー・セヴンス・コードのところに必ずと言っていいほどこの押さえ方が出てくる。でも、私は決してこのヴォイシングを使わない。なぜならサウンドが酷いからだ(笑)」と語っています。

そのヴォイシングは5弦ルートのC△7で、下からC-G-B-E-G (R-5-M7-M3-5) と積み上がるコードです。確かにギタリストなら知らない人はいないであろうフォームのコードですよね。

このヴォイシング以外にもモレノが「もはやこれは自分にとってジャズではない」と説明するような、取ってつけたような感じのコード・ワークが紹介されています(自戒を込めて書いています)。

さて、前述の「C-G-B-E-G」はひどいヴォイシングのコードでしょうか。ひどいかどうかは置いておくとして、1弦のGを省略したC-G-B-EはC△7の第二転回形(G-B-C-E)をDrop 2化(上から2番目の音をベースに移動させる)したものですよね。

この「C-G-B-E」の「単独での」響きが美しいかひどいかは別として、Drop 2ヴォイシングで滑らかなヴォイス・リーディングを意識してコードワークを行う時、このヴォイシングを使うことはそれなりにあると思います。個人的にはそういう文脈の中ではそんなにひどい響きでもないと思います(さらにトップに5度を自動的に追加することはしませんが…)。

マイク・モレノが言いたいことは恐らく、教則本やコードブックに羅列されているようなコードを「無自覚にあてはめて」使うことがダメだということだと思います。

確かにこのあたりをきちんと説明している教則本は決して多くはないと思います。また、教則本にしても、対面レッスンにしても、「フレーズの習得」に非常に多くのウェイトが置かれていて、コードワークがどうあるべきかといった点については、やや蔑ろにされている印象を受けます(それは自分の好きなようにやっていて下さい、ということが多いのではないでしょうか)。

ヴォイシングの美しさ、声部移動へのこだわりといったものにもっと配慮しないといけないなとあらためて思わされました。「バッキングの番だから知っているヴォイシングのコードを、何となくそれっぽいリズムで弾く」というのは、もはやジャズではないというより、もはや音楽ではない、と言うべきなのでしょう。





マイク・モレノが決して使わないヴォイシング
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コメント

  1. トシ より:

    はじめまして。参考になる記事が多く、いつも楽しく拝見しています。
    マイク・モレノのこの発言、興味深いですね。
    こんなにバッサリと言い切っていいのか、とは思いましたが、彼の言わんとしているところはわかります。
    自分も近頃、和音の移り変わりの自然さとか、滑らかさに意識を向けて、試行錯誤していますが、奥が深すぎてなかなか形にならないのが現状です。
    こういう点について詳しく解説している教則本があればなあ、なんて日々思っています。

  2. JGSpot より:

    こんにちは、嬉しいコメントをありがとうございます。
    マイク・モレノは上述のインタビュー中、「ピックはサウンドとは無関係だ。とにかく重要なのは左手」という別の断言までしていて、面白い人だなと思いました。これについては思うところがあるので、後日また記事を書いてみたいと思います。

    名プレイヤー名コーチにあらず、という言葉がありますが、マイク・モレノは先生としても非常に才能がある人なのではなかろうか、と件のインタビューを読んでいて思いました。多くの気付きを与えてくれそうです。

    和声の自然な移動を可能にするボイス・リーディングについては、John Thomas “Voice Leading for Guitar – Moving through the Changes”という本が有名かもしれません。タブ譜はなく、ゆっくり時間をかける必要のある本ですが、取り組んでみる価値はあると思います。

  3. トシ より:

    返信ありがとうございます。
    ピックの記事も読ませて頂きましたが、そちらも興味深いですね。自分はいままでそういうふうに考えてこなかったのでビックリです。
    色々な気づきを与えてくれるっていうのは、学習者にとってはなによりですね。上達するにはいかに気づくかが一番大事だと感じております。

    Voice Leading for Guitarという本、調べてみましたが、自分の求めていたものにマッチしそうな感じです。難しそうな感じもするので、ビビってますが、じきに購入してみようかと思ってます。教えてくださってありがとうございます。

  4. やっさ より:

    こんにちは。興味深い記事ですね。

    元記事で”これはダメだ”と言うことが書いてあったということは、”代わりにこれはどうだ?”みたいなことは出ていましたか?

    それとも
    ”「バッキングの番だから知っているヴォイシングのコードを、何となくそれっぽいリズムで弾く」というのは、もはやジャズではない”
    ということで譜例のようなものは無かったのでしょうか?

    ちょうど同じようなところを悩んでいます。

    指が異常に長いなら新しいフォームをいくつでも考え付きますが何せギターです。

    ガイドがあると助かりますがそれもいつか陳腐に感じるようになってしまうんですかね…