矢堀孝一氏の「ジャズ・ギターの常套句」について

若かりし日の矢堀孝一氏による教則DVD「ジャズ・ギターの常套句」について書いてみたいと思います。相当昔にリリースされたものだったように記憶していますが、今でも廉価版 ジャズ・ギターの常套句[DVD] (DVDビデオ・ワークショップ)として流通しているようです。

廉価版 ジャズ・ギターの常套句[DVD] (DVDビデオ・ワークショップ)

約100個もの様々なII-V-Iフレーズ(Tonicでの一発フレーズを含む)を千本ノック状態でひたすらお届けするという内容で、発売当時は大変話題になりました。矢堀氏による「ステラ・バイ・スターライト」や「枯葉」のデモ演奏では勿論、紹介されているII-V-Iフレーズがたくさん使われています。

収録されているII-V-Iフレーズは非常に完成度が高いものばかりで、今となってはほとんど死語に近いような、決してそのまま弾いてはならないような伝統的なフレーズも含まれています。とりあえずそれらを大量に学習して、実際にはめこんでやってみよう、という内容です。

矢堀氏のデモ演奏には、何かこう、ポストモダンな清々しい態度でこれらのII-V-Iフレーズを大胆にカット・アンド・ペーストして使っているかのような雰囲気があり、その様はDJが過去の音源をターンテーブルで扱っているかのような新しさがありました。

私も、私の友人たちも、このDVD(当時はVHSだったかな?)を買って、まじめに「フレーズのはめこみ」を練習しました。誰もがジャズに近付くことができました。ジャズの楽しさ、面白さ、美しさに触れることができました。うまくなれるかもしれない、という幻想に私たちは浸ることができました。

しかしこの「II-V-Iの練習」の先には巨大な壁があり、私達の行く手を阻んだのでした。この教則ビデオで頑張った私の友人たちは、もう誰もジャズギターをやっていません。今になって思うと、この教則DVDは使い方を誤ると大変危険な劇薬だったのではないかと思います。





矢堀孝一氏の「ジャズ・ギターの常套句」について
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