どれほど初歩的なことであっても、完全に真実で本物でなくてはならない - Bill Evans

ギタリストではありませんが、ピアニストのビル・エヴァンスの名言を紹介します。

(僕のところにアドバイスを求めてやってくる人は)最終的な成果に大まかにアプローチしようとしてしまい、どんな初歩的なレベルにおいても、リアルな、嘘のないかたちで取り組もうとしないんだ。どれほど初歩的なことであっても、完全に真実で、完全に本物で、完全に正確でなくてはならないんだ。

彼等はむしろ問題の全体をぼんやりと捉えてしまって、その中の小さい部分を取り上げて、それを真実のものに、本物に仕上げようとする努力をしない。これは本当に重要なことだと思う。どのレベルでも自分の演奏に満足できなくてはいけないし、クリアで、本物で、とても分析的でなくてはならないんだ。

全体をぱっと手に取って、それをぼんやりと眺めてみても、何となくそれをわかったような気にはなるんだけど、この方法では混乱するばかりだよ。最終的には混乱しすぎて八方塞がりになってしまうと思う。

上記のビル・エヴァンスの言葉は以下の動画の0:18〜1:05まで部分の私の拙訳(意訳)です。字幕の日本語は既に立派だと思いますが、やや抽象的な内容なので少し言葉を補って訳してみました。

なおビル・エヴァンスが喋っている英語は概ね下のような感じだと思います。英語が少しわかる方はこちらも合わせて読むとニュアンスがよりわかると思います。

They tend to approximate the product, rather than attacking in realistic, true way at any elementary level. Regardless how elementary, but it must be entirely true and entirely real and entirely accurate. They would rather approximate the entire problem than to take a small part of it and be real and true about it. And I think this is a very important thing that you must be satisfied and very clear and very real and to be very analytical at any level. You can’t take the whole thing and to approximate the whole thing in a vague way gives one a feeling that they probably more or less touched the thing but in this way you just lead yourself to a confusion – you know, ultimately you’re gonna get so confused that you never find your way out.

この動画で、これらの言葉でビル・エヴァンスは何を言おうとしているのでしょうか。私が理解したのは、誰かの素晴らしい演奏を聴いて、その雰囲気をぼんやり真似る、なぞるようなことをしても、つまり誰かの演奏の「結果」に「外側から」接近しても、ジャズ・ミュージシャンとして、インプロヴァイザーとしての成長は見込めないということです。

壮麗なヴァーチュオーゾ的な雰囲気の演奏を聴いたとします。ジョー・パスでもパット・メセニーでもカート・ローゼンウィンケルでも誰でも良いでしょう。そういうすごい人達の演奏を聴いて、自分もそのように弾きたいと思い、サイズの大きい派手なフレーズをコピーする。それは楽しいことではありますが、ビル・エヴァンスが言うように、その先に待っているのは恐らく「混乱」でしょう。

そしてジャズの魅力に取り憑かれた多くの人達が、こうした”approximation”(漠然と取り組むこと)に陥ってしまうのではないでしょうか。その結果、演奏家として成長できずに、悩んだり、最悪な場合は楽器をやめたりしているのではないでしょうか。

「最終的な産物」の「全体」ではなく、もっと小さい単位で、本当に短いリフのようなフレーズを、良いリズムで、十分に歌って弾く。「部分」を積み上げ、育てる。それは最終的には壮大な構築物になるのかもしれません。しかし最初からその壮大な構築物を築きあげようと思っても、うまく行かないことをビル・エヴァンスは言いたいのだと思います。

私はこの動画で語られている内容に大いに心当たりがありました。ビル・エヴァンスのこの言葉は私にとって大きい転機となり、それまでの練習内容、音楽への取り組みを全面的に見直すきっかけとなりました。私はビル・エヴァンスのこの言葉で変わることができたと思います。

どれほど初歩的なことであっても、完全に真実で本物でなくてはならない - Bill Evans
この記事をお届けした
Jazz Guitar Blogの最新ニュース情報を、
いいねしてチェックしよう!