ストラトキャスターというヤバい楽器についての雑感

いま、知人からストラトキャスターを預かっています。フェンダー・ジャパンの廉価モデルらしいです。雨の夜にやって来て、理由は聞くな、とにかく預かってくれ、とのこと。警察に追われているようでした。その後、連絡が取れません。

ストラトキャスターでジャズを弾くと実刑は免れないので私も手元に置いておくのは怖いのですが、ストラトは過去に自分で買ったこともなく、じっくり弾いてみたこともないので興味津々で試しています。改めて思うのですが、フェンダーの楽器はギブソンと全く違う個性があって驚かされます。

ストラトキャスターというヤバい楽器についての雑感

ロングスケールのこと

まずスケールが長い。ミディアム・スケールのフェンダー製ストラトもあるようですが、普通は25.5インチのロングスケール(648 mm)。ギブソン系は24 3/4インチ(628.65mm)なので、やはり長く感じます。ローポジションでのコードが少し弾きづらくなる反面、12F以上のハイポジションでもフレット間が広いのでこっちは弾きやすい(指が渋滞しないw)。

参考:エレクトリックギターのスケール長は主に下の3タイプ。

  • ロングスケール:約648mm (647.7mm = 25 1/2インチ)
  • ミディアムスケール:約628mm (628.65mm = 24 3/4インチ) 
  • ショートスケール:約609mm (609.6mm = 24インチ)

ストラトキャスター、テレキャスター、ジャズマスターはロング(レギュラースケールとも言うらしい)。ギブソン系は大体ミディアム。フェンダーでもムスタングやジャガーはショート。ちなみに箱物だとGibson L-5がロングスケール、バードランドが23 1/2のショートスケール。

ロングスケールになるとピッチが安定すると聞きますが、それは確かに感じます。気持ち良いですね(同じロングスケールのテレキャスターでもそれは感じる)。プレイヤビリティとしては、まぁ慣れればロングスケールでも困ることはないかなと思いました。

ネックと指板のこと

いま預かっているそのストラト(モデル名不明)については、ネックは細めのものみたいでわりと弾きやすいです(恐らく”Slim C”というタイプ)。フェンダー系のネックは12F付近から丸太のように太くなるものがあって、あれだとハイポジの4〜6弦側が弾きづらくなるのですがこのギターならOK。そしてネックへの弦振動が気持ち良い。

でも問題は指板のアールです。フェンダーの標準的な7.25インチ(184.1 mm)のアール、「184R」というタイプらしいのですが、これはギブソンの305Rに慣れていると弾きづらいなぁと感じます。慣れかもしれないけど、1〜2弦と5〜6弦の弦高がより低くなるのでピッキングが難しい。個人的にはもっと平坦なほうが好み。弦高も下げたいし。

同じストラトでもモダンなコンセプトのモデルや、日本のフジゲンのモデルなどにはもっと平坦なアールのものもあるようです。ストラトの音色に興味はあるけど弾きづらい…と感じる方はそういうものも試奏するのも良いのではないかと思いました。

トレモロ・ブリッジのこと

いや、これは驚きました。トレモロ・アームはいま付いていないのでただのブリッジとして機能してくれれば良いのですが、友人は.009-などという違法ゲージを張っていたらしいので黙って.011-のセット(Elixir NANOWEB Medium .011-.049)に交換しました。するとチューニング中に バキン! という音がしてブリッジが浮きました。

やべっ、壊しちゃったかな、と一瞬焦りましたが、ギターの裏蓋を開いて、2本のネジを締めてスプリングの張力を上げました。なんて面倒臭いギターなんだ… でも、これでこのスプリングの種類とか本数とか掛け方にこだわる人がいる理由を理解できました。構造を考えるとこれは音に影響するパーツでしょう。弦振動、拾ってます。

「この世界に深入りしてはならない。」 ー 僕は自分にそう言い聞かせ、そっとキャビティのカバーを閉じた。人生には知らなくても良いことがたくさんある。

ピックアップのこと

音色をいろいろ試してみて、面白い発見がありました。セミアコやフルアコなら何も考えずにフロントピックアップを選ぶのですが、どうもストラトだとネックとセンターのハーフトーンが良い感じに柔らかくて好み。ネック側のみも良いけどやや出力が強くて硬質な感じ。音色が多いなー、と感心しました。これは楽しい。

そしてリア・ピックアップにはトーンコントロールがありません。えっ、ないの!? と最初驚きました。リアは多分使わないからいいけど、本当ヘンなギターだ(笑)。

でも音色以外の問題が。私の弾き方だとセンターピックアップにピックが当たってしまうのです。ピッキングが雑なんだろうけど、これは厳しい。なのでセンター・ピックアップをボディ面とツライチになるくらい下げました。するとハーフトーンの魅力が…ということになりますが、このあたりのバランスが難しそう。

ポールピースの高さを独立して調整できないことにも困惑。3弦が巻き弦しかなかった時代の名残りでこうなっているとのことですが、.009-のゲージで弾くと2弦のボリュームが低くて困りました。でも.011-に換えたらそこまで気にならなくなりました。このあたりの調整代がないあたりもギブソンとは大きくコンセプトが違います。

ボディ形状のこと

ストラトキャスターは弾きやすい、とこれまで多くの人に聞かされてきたのですが、今回じっくり弾いてみてその意味がわかりました。ボディ形状がすごく良いんですよね。コンター加工といって、ボディ上側が肋骨あたりに当たっても痛くない感じにフィットします。あと右腕の肘が良い感じにボディの上に乗る。ハイポジションへのアクセスもすごくラク。ストラトはハイポジションを弾きたくなるギターだ、と思いました。

ペグのこと

これはテレキャスターもそうですが、フェンダー系の頭に穴があるこのペグ、弦交換がギブソン系より楽ですね。巻く前に先端をペグ2.5個分余分に残してあらかじめカットする必要があるので、出先では常にニッパー持ってないといけないと思うけど、カットした後の巻きはこのタイプのほうが早いです(私の場合)。何というか効率的。

雑感まとめ

じっくり弾いたのはまだ数日程度なのですが、フェンダーとギブソンは全く別物だな、とあらためて感じます。同じソリッドでもレスポールなどとも全くコンセプトが違う。

そういえばジャズ系の人でストラトをメインに使っている人は少ない。テレキャスターは結構いるけど、ストラトはニア・フェルダーくらいしか思い浮かびません。ビル・フリゼルもむかし使っていた。アダム・ロジャースもたまに。たまになら使う、という人はわりといるのかも(実は日本にも最高にかっこいい若手のストラト使いの方がいて、私はファンだったりします)。

ニア・フェルダーは13歳の時に$250で買ったフェンダー・メキシコのストラトが今でもメインだそうです。ステーヴィー・レイ・ヴォーンのファンなのでゲージは.013-を愛用とのこと。ギターはやっぱり調整とセットアップが大事ですね。フェルダーの音はすごく好き。ブースター・ペダルも使っているらしいけど、すごく良いですね。

そしてある夜

そしてある雨の夜、ピンポンと呼び鈴が鳴って、ピザの宅配のフリをした帽子で目を隠した男がドアの隙間からこれを渡してきました。実は.011-のゲージを張った時ブリッジが持ち上がってしまって、スプリングが3本だと足りないのかな、と色々調べていたら(結局3本でもOKだったんだけど)、音色が良い感じに変わる面白いパーツとして評判だったので注文していたのでした。

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もともと入っていた3本のスプリングのかわりにこれを5本インストール。ネジは思い切り締めなくても.011-ゲージでブリッジ浮きはなし。面白いですね、やはり音色が変わります。ストラトってマイクロ・リバーブ・ユニットが内蔵されたギターみたいな感じですね。このあたりはテレキャスターにもない魅力かも。

こういうパーツなんかにハマっちゃいけないんだ。このRawVintage Tremolo Springs RVTS-1はジャズギター取締法で危険パーツに指定されている。こういうものを買ってはいけないんだ。

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