怪談(弐)


※心霊現象が苦手な方、回りに誰もいない方は、夜には絶対に読まないでください










その蒸し暑い夜も、私は薄暗い自室で、いつものようにギターの練習をはじめようとしたのです。しかし、ギターを手に取った瞬間、何とも言いようのない違和感を覚えたのです。

弦高が、高い…

ネックが…動いた?

そう考えると、ゾクッ、と背筋に震えが走りました…ですが、湿度の高い日でしたので、ネックが動いてしまったのは、心霊現象ではないだろう、と自分に言い聞かせ、とにかくギターのチューニングをしようと、その古びたES-175を抱えました。

その時、部屋の奥でピキンッ!!という音が聞こえ、ヒエッと私は飛び上がりました。

部屋の奥のラックに置いてあるギターのどれかが、湿気でネックが動いたせいか、弦が滑り、ナットからその甲高い音が出たようでした。

しかし、私の首筋あたりに、冷たい汗が吹き出してくるのを、感じていました。

気を取り直して、チューニングをはじめました。右手で3弦を、ポーン、ポーンとはじきながら、左手でペグを回していきます。

ポーン、ポーン…

しかし、何か様子がおかしいのです。ポーン、ポーン、というその音、まったく音程が変わらないのです。

左手では、きちんとペグを回しています。

ポーン、ポーン…

いくらペグを回しても、音が上がりません。私は、自分の呼吸が荒くなってくるのを感じました。

そして回し続けていたそのペグが、3弦ではなく4弦のそれであることを悟った瞬間、

バチィィィィィィン!!!

という轟音とともに、弦が切れ、私の顔を鞭のようにビシィィ!!と打ち、私はヒエーーーーッ!!!!と叫びながら、椅子から転げ落ちました。

慌てて立ち上がろうとしたその時、何かを踏みつけたような気がしました。その時、轟音で「ステラ・バイ・スターライト」のバッキング演奏が流れました。それは私自身の演奏だったので、ヒエッ、俺がギターを弾いている!!と驚いたのですが、踏んだのはルーパーで、前の日に自分で入れていた演奏が流れただけでした。

ガタガタガタガタ、ガタガタガタガタ震えながらも、深呼吸をして、私は練習を再開することにしました。

175は弦が切れてしまったので、今度は、まだ使ったことのない、友達に借りていたギターをラックから取り出しました。

友達によると、そのギターは特殊なものだそうで、チューニングする際は、ヘッドの裏側にあるボタンを押すように、と言われていたのでした。

その通りに私はボタンを押し、また、ポーン、ポーンと、音を鳴らしはじめました、が、まさにその時のことでしたペグが勝手にギィィーッギィィーッ!!!と動き出して私はウワァァァァァァ!!!!と椅子から転げ落ちました。

私はすぐその友達に電話してお前のギターッ!!!これ何か憑いてるッ!!!と訴えました、すると「落ち着け落ち着くんだそれはトロニカルチューンというオートチューニングマシンであり心霊現象ではない」となだめられました。



もうすっかり恐ろしくなって、布団をかぶって寝てしまおうかとも思ったのですが、やはり寝る前の練習はやっておきたかったので、私は嫌々ながら、そのおばけみたいなギターを抱えて、練習をはじめました。

しかし、何かヘンなのです。

指が、思い通りに動かない。

自分でイメージしたような速さと器用さで弾くことができない。

これは…と、私は考えました。

もともと私のテクニックは、この程度だったろうか。それとも、私はいま、金縛りにあっているのか…

指をいっぱいに拡げる、難しいコードを押さえようとしてみました。

やはり、思うように押さえられず、きれいな音が出ません。

額と背中に冷たい汗がびっしり吹き出してきているのがわかりました。

何か霊的な力が、私の指から力を奪っている。

または、私にはテクニックがない。


それは、どちらであっても、大変恐ろしいことだったので、それ以上は考えないようにしました。

私は練習を続けることにし、1本の弦につき2個の音を弾く「ツーノート・パー・ストリング」で6弦からメジャースケールを上行することにしました。すると、ドレミファソラ…と音程は上がっていくのに、指はネックをヘッド側に下っていくじゃありませんかこれは怪奇現象だヒエーーーーッ!!!!

その時アンプからブォォォォォォーン!!!!という爆音が聞こえ私は思わずギャーーーッ!!!!と叫んだのですが、それはDV Mark Little Jazzの、よくあるファンの騒音でした。

この夜はもう練習をやめることにして、私はYouTubeで大好きなパット・メセニーの動画を見てから寝ることにし、適当なものをクリックしてみました。

ヒエーーーーッ!!!!楽器が勝手に演奏しているーーーーーッ!!!!





怪談(弐)
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