楽器演奏によって18の恩恵が受けられる説

Effective Music Teachingというサイトに「楽器演奏によって受けられる18の恩恵」という面白い記事が掲載されていました。人は楽器の個人練習・アンサンブル練習を通じて音楽の領域以外でも通用する様々な能力・スキルを獲得するはずだと日頃から感じていたのですが、先の記事がきれいにまとめているように感じたので概要を私の感想を交えつつご紹介します。

1.記憶力が良くなる

楽器の演奏だけでなく単に音楽を聴くだけでも記憶力が良くなる、という研究結果があるそうです。また未就学児童を対象にした実験では毎週キーボードの練習をさせたグループのほうが時間・空間認識能力が34%もアップしたとか。しかもその効果は一時的なものではなかったとのこと。さらに面白いのは継続的に楽器の演奏を続けていると脳の形状自体が変わってくるという研究結果があること。

こういう研究結果はソースが大事ですが、まぁその通りではなかろうかと思います。1日何時間も指を動かしまくってラーラララとか何十年もやっていたらそりゃ脳もおかしく…いやそれに向いた進化を遂げるに決まっています。様々な認知能力も向上するでしょう。と同時に、何処か劣化することもあったりはしないのか、個人的に気になるところです。

これまで何本のギターを買っていくらつぎ込んだか、思い出せません。

2.タイムマネジメント・段取りのスキルが改善する

上達するには時間を有効活用して効率的に練習する必要があるわけで、自然とタイムマネジメント・段取りがうまくなるというお話。これもその通りだと思う…のですが、実際にはプロアマ問わずタイムマネジメント・スキルが皆無な方々と遭遇することも珍しくもありません。とはいえ原理的にはやはり改善するように思います。良い練習計画を立てられるスキルと、楽器のスキルは相関関係にあるのではないでしょうか。

身近なギタリストでものすごく上手な方はやはり段取りがすごく良いと感じることが多いですが、そういう方でもお話を聞いているとむかしは全然効率良い練習ができなかった、ということがよくあります。

3.チームスキルが向上する

バンドやオーケストラでは他人といかにうまくやっていくかが大事になります。ジャズやブルースのジャム・セッションのような一期一会的シチュエーションでも基本は同じでしょう。他人の演奏に耳を傾ける必要も出てきます。全体でひとつの良い音楽を生み出そうとすることは、例えば会社のような共同体で最大の成果を上げる際にも役立つのでしょう。

4.忍耐力が身に付く

何かを完璧に弾けるようになるためには何回も何回も練習しなければならないので忍耐力が付く、という説。これもその通りでございましょう。駄々をこねてもクレーマーのようにゴネても楽器がうまくなるわけではない。ひたすら丁寧に練習するしかないのであります。トラブルや困難が発生しても粛々と丁寧に対処。やることをやるだけ。人事を尽くして天命を待つ、であります。むかし紹介したKurt Rosenwinkelのインタビュー記事を思い出しました。

Kurt Rosenwinkelのインタビュー:「音楽の扉をドンドン叩いてもダメだよ」
カート・ローゼンウィンケルが以下の動画中で素晴らしいことを話しているので訳出してみます(日本語にしづらい箇所が多く、読みづらいかもしれません...

5.異なる動作のコーディネーション能力が身に付く

元記事では(筆者はフレンチホルン奏者だそうです)譜面を見る目と楽器を操作する指の連携が良くなると書いていますが、これが楽器演奏以外の何に有益なのかは不明ですw ドラマーの方など手足バラバラに動かすわけですから、さらにすごそうです。私が敬愛するジャズ・ギタリストの方にギターを弾きながら足で鍵盤を弾きボイス・パーカッションを入れるという超絶な方がおられるのですが、そのスキルは他のどのような分野で役に立ちうるのか…脳の画像を見たい…(元記事ではそこまで複雑な状況に触れているわけではありません)。

6.数学的能力が高まる

譜面を読んだり音楽理論を勉強する際には数学的な理解が必要になるから、とのこと。楽器演奏をする子供のほうがそうでない子供より数学の成績が良いという研究結果があるそうです。リズム譜を真面目に読んでいると数学(というか算数なのでしょうけれど)的な理解力は確かに向上しそうです。足し算掛け算割り算のような単純な計算能力は間違いなく高くなると思います。パターン認識能力や幾何学的理解も伸びそうな気がします。頭は良くはなっても、悪くなることは決してないと思うのですが、どうでしょうか。

7.読解力が改善する

これは上とほぼ同じで一般的に「読んで理解する能力」が読譜を通じて向上する、という説。譜面に何が書かれているか。それはどういう意味か。どうすればその音を出せるか。ただこれは楽譜を読まない方にはあまり関係のない話かもしれません。

8.責任感が強くなる

これには2つの理由があるそうです。まずは楽器の手入れをしておかないと良い音が出ないので自然と楽器の世話をするようになる、楽器を大事にする、という意味での責任感。もう1つは、リハーサルや演奏イベントにきちんと参加することによる責任感。モノを大事に扱う、投げ出さない、約束を守る、コミットメントを放棄しない、ということですね。

これはなかなか新鮮な視点でした。しかし世の中にはステージ上でギターを燃やしたり約束をすっぽかしたりするミュージシャンも珍しくないと聞くので、必ずしもこうは言えないのかもしれません。

9.文化史に興味を持つようになる

J.S.バッハが好きなら神聖ローマ帝国に興味を持ったり、オリヴィエ・メシアンが好きならカトリシズムに興味を持ったり、ジャズやブルースが好きならアメリカにおける黒人の歴史に関心を持つようになる、というようなお話です。音楽に興味を持つ子供は自然と世界史にも興味を持つ場合もあるような気がしてきました。

ちなみに切手収集に興味を持つ子供は地理に詳しくなり、釣りに興味を持つ子供は忍耐力が強化されると聞いたことがあります。

10.集中力が鋭さを増す

何か当たり前のことのようですが、楽器演奏では良い音程を出す、良い音色を出す、リズムがよれないようにする、とあらゆることに気を配るので自然と集中力が増す、ということのようです。自分自身のことだけでなく、他人の音もよく聴かなくてはならないのでなおさらです。

11.自己表現力を鍛え、ストレスから開放される

上手になればなるほど自分自身を表現できるようになる。何を演奏したいか?どのように演奏したいか?思うように表現できるようになるとストレスから解放され、セラピー的な効果があるのだとか。音楽は自閉症や鬱病を患っている子供の治療にも使われるとのこと。

思うように表現できないとそれはそれでストレスだったりするのですが…それについては次の項目を参照。

12.達成感を得られる

絶対無理と思っていたものに挑戦して克服できるようになると自分が誇らしく思える。最初は管楽器で2拍だけ音を伸ばしたりハイ・ノートを出せるだけでも達成感。上達するにつれ、自分の耳だけでなく他人の耳にも心地良い音を出せるようになるとさらに達成感がある、という説。

上達するにつれ自分がどれだけ多くのことを達成してきたかを忘れがちになるので気を付けたいところですね。下はそのことについて掘り下げた記事です。

壁にぶちあたったら、まだできていないことではなく、できるようになったことを数え上げてみる
スランプに陥った時は、自分がまだできていないことではなく、これまでの練習の結果できるようになったことを振り返るようにしています。

13.社会的スキルが身に付く

何でもバンドやオーケストラに入る人々のうち何人かは「最良の人々」であり、そうした人々とは家族同然の付き合いになり一生の友だちになる、という説。バンドやオーケストラに入る人々にも悪い人はいると思いますが、良い人々との付き合いが長くなるのは同意。幼馴染よりも、会社の同僚よりも、セッションで知り合った友達やバンドメンバーのほうが気心が知れている、という方は多いのではないでしょうか。

14.聴く力が改善する

単に自分の楽器の音をよく聴いてチューニングをする必要があるだけでなく、バンド演奏の中で自分の音量や音質がどうかを耳で判断しなくてはならないので、聴く力が改善する、という説。元記事では明示的に書いてはいませんが、他人の話にもよく耳を傾けられるようになる、集団の中での自分を客観視できるようになる、と言いたいのかもしれません。

チューニングがいつも狂っているプレイヤーはどうなるのか。その話はとりあえずスルー。

15.規律とは何かを学べる

とにかく楽器というのは習得するのが簡単なものではないので、規律と訓練を必要とするというお話。修行です。多くの親が子供にピアノを習わせたいと思うのは情操教育的な面以外にも習い事を通じて規律・訓練に慣れさせたいからでもあるでしょう。

16.本番での演奏能力を向上させあがり症を改善する

他人に聴いてもらいたいと思うので一生懸命練習する。すると本番に強くなり、あがり症も克服できる、という説。細部にわたってじっくりと練習を重ねていけば自信を持って人前で演奏できるようになる、しかもバンドやオーケストラで他人と一緒に演奏する機会があれば、独りではないのでなおさらあがりにくくなるらしい。

ジャズで言うなら、頭が真っ白になっても指が勝手に動くくらい練習しまくって何度でもセッションに参加するとうまくなる、ということでしょうか。練習量はやはり自信に繋がるところが大きいと思います。あまり練習しないで人前での演奏に臨むとそれはもう不安になるわけですが、死ぬほど練習した上でステージに立つなら、これでダメなら何やったってダメだろう、と開き直れるのではないか。緊張のあまり頭が真っ白になってもとりあえず何かやれてしまっていた、という経験は私にもあります。

17.呼吸器系が良くなる

これは管楽器独特の話だと思いますが、とにかく呼気のコントロールが大事なので自然と呼吸器系が鍛えられるというお話のようです。直接的に呼吸で音を出すわけではないギタリストやピアニストもまじめに考えてみると良いことがありそうです。

18.自分自身と他人を幸福にできる

自分が好きな音楽を演奏するのは楽しいし、それを聴いている人が喜んでくれるのも嬉しい、という説。ごもっともです。

まとめ

この元記事、網羅的でとても面白いと思ったのですが、同時に、これら全ての恩恵は「楽器の練習を諦めずに続けてきた人」にだけ与えられるものだろう、とも思いました。途中で投げ出してしまったり、別にこれ以上上達しなくてもいいや、と思ってしまった場合、どれも得られないかもしれない、と思いました。

楽器演奏によって18の恩恵が受けられる説
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