ダイアトニックという用語をあらためて理解する

ダイアトニックという用語があり、かなり日常的に使われていると思うのですが、いざ正確に説明しようとすると「あれ?」と思うことがありました。そこであらためてこの言葉の意味を調べてみたところ、「本来の意味」と「拡張された用法」の2種類があるらしいことがわかったので、まとめてみます。

まず使用例

そもそも次のように、スケールやノート(音)、コードという単語とセットで使われることが多いと思います。

  • ダイアトニック・スケール
  • ダイアトニック・ノート
  • ダイアトニック・トライアド
  • ダイアトニック・セブンスコード
  • ノンダイアトニック・ノート
  • ノンダイアトニック・コード

本来の意味

まず「ダイアトニック・スケール」(Diatonic Scale)という言葉があります。これが大元。この日本語訳は「全音階」です(※「全音音階」はホールトーン・スケールのことなので注意)。ではその「全音階」とは何か。楽典 音楽家を志す人のためののp.266には次のようにあります。

全音階 [diatonic scale 英]

正確には、全音階的音階の呼称である。1 oct.内を5つの全音と、2つの半音に分割した音階で、臨時記号を伴わないで形成される長音階と、それとまったく同じ音階固有音を有する自然短音階とを指している。

図解音楽辞典(白水社)のp.87には次のように書かれています。

5つの全音と2つの半音を持つ7音の音階

これらを読む限り、私達がメジャー・スケールと呼んでいるもの、及びその平行調であるナチュラル・マイナー・スケールが「ダイアトニック・スケール」である、と言えそうです。

「ダイアトニック・ノート」は「ダイアトニック・スケール」の構成音という意味で、「Cの(=ハ長調・Key Cの)ダイアトニック・ノートとは?」と聞かれたら、正解は「C, D, E, F, G, A, Bです」となります。

「Am(キー)のダイアトニック・ノートとは?」と聞かれたら「A, B, C, D, E, F, G」が答え。

「ダイアトニック・トライアド」は各ダイアトニック・ノート上に、3度間隔で別のダイアトニック・ノートを2つ積んだもの。たとえば「Cのダイアトニック・トライアド」は…

C major triad
D minor triad
E minor triad
F major triad
G major triad
A minor triad
B diminished triad

「ダイアトニック・セブンスコード」は各ダイアトニック・ノート上に、3度間隔で別のダイアトニック・ノートを3つ積んだもの。たとえば「Cのダイアトニック・セブンスコード」は、コードネームで言うと

CΔ7, Dm7, Em7, FΔ7, G7, Am7, Bm7(b5)

となります。

ダイアトニック・ノート以外の音を「ノンダイアトニック・ノート」と言い、ダイアトニック・ノート以外をルートとする全てのコードを「ノンダイアトニック・コード」であると表現することもできます。

拡張された用法

ここから拡張された用法を見ていきます。たとえば皆さんは「Em7ってDドリアンのダイアトニック・コードかな?」などと言ったりはしませんか。私は、言います。私の身近でも普通に使われています。これは、ドリアン・モードがメジャー・スケール(Ionian)の転回形であることを考えても、まぁおかしくはない用法ではないかと思います。

ではこれはどうでしょう。「EbΔ7#5は、Cメロディック・マイナーのダイアトニック・コードだよ。」こういう言い方、皆さんはしますか。私は、します。普段何気なく使っていて、回りの人ともこれで話は通じている(ような気がする)のですが、今回この記事を書くにあたっていろいろ調べてみたところ、アカデミアから見ると少し外れた用法らしいです。

(全音階に対し) 臨時記号を伴い半音階的音程を含んだ和声短音階と旋律短音階の両者を、半音階的短音階と呼ぶことがある。 (楽典 音楽家を志す人のための p.266)

など、他を調べても「ダイアトニック」っていうのはメジャースケールと平行調のナチュラルマイナーのことだよ、という意見のほうが多いようです。だから、本来的には「メロディック・マイナーのダイアトニック」とか「ハーモニック・マイナーのダイアトニック」というのは少し違うらしい。

ただ「母体となるスケールの構成音、及びそのスケールノートの(=スケール・ディグリーの)」という意味で、「メロディック・マイナーのダイアトニック・セブンスコード」などという言い方が使われることがある、というのが私の解釈です。英語圏を調べてみてもこの言い方は珍しくないように思いました。

聞いたことがない用法

ではどんなスケールについても、「そのスケールのスケールノート」を意味するために「ダイアトニック」という言葉が使えるのでしょうか。例えば…

「Cホールトーンのダイアトニック・ノートはC, D, E, F#, G#, A#です。」

とか、

「Cのコンディミのダイアトニック・ノートはC, Db, Eb, E, Gb, G, A, Ab, Bbです。」

などと言うこともできるのか。

あくまで私の場合ですが、これまでそういう言い方は聞いたことがありません。上はいずれも6音音階だったり8音音階だったりするので、「ダイアトニック」はやはり「7音の音階」との関係で使われる言葉であるように思われます。「ペンタトニックのノンダイアトニック音」という言い方なども聞きません。

まとめ

「ダイアトニック」という用語は、元々は、そして厳密には「メジャースケールの、そして平行調関係にあるナチュラル・マイナースケールの」という意味で使われる言葉。そして慣用的には、メジャースケールの転回形であるチャーチ・モード、そしてメロディック・マイナーやハーモニック・マイナー・スケール及びそれらの転回形についても使われている言葉。ということになりそうです。

これで、次のような表現が出てきても大きい混乱なくコミュニケーションを図れるようになるのではないでしょうか。

  • IV#m7(b5)ってダイアトニックじゃないけどスタンダードでよく出てくるよね
  • G7(b9)のb9という音はダイアトニックでしょうか?
  • Gメジャースケールの7番目の音のダイアトニック・コードは何?

等々。

そもそもこの「ダイアトニック」という言葉の起源を遡っていくと古代ギリシャの音階システムに行き着くこともわかったのですが、この記事のスコープから外れるのでここまで。なおこの記事は「ダイアトニックとはこうだ!」と私が他人様を説き伏せることを目的としているわけではないので、異論などありましたら是非。

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