エリック・ドルフィーがこの先生きのこるには

先日ジャズギター関連教則本を3冊執筆しましたという冗談を書いている時、エリック・ドルフィーのことを思い出していました。

音楽のみで生計を立てていくことは簡単なことではないはずで、多くの方々がライブ演奏以外に、音楽レッスンを提供したり、学校で教えたり、要望に応じて結婚式場でのBGMや、ホテルのラウンジでの物静かな演奏等々、様々な仕事を組み合わせることによって生活を成り立たせていると思います。

そこでエリック・ドルフィーなのですが、もし彼がいまこの国にいたとしたら、そのように暮らしていけるだろうか。有名人の誕生パーティーのバックバンドで欠員が出たのでトラをやってくれないか、と言われたとして、彼はそれをやれるだろうか。やったとして、次もお声がかかるだろうか。と思ったのでした。

36歳の若さで糖尿病による心疾患で早逝したこの人について、推測で何も言うことはできませんが、彼はそういう仕事、できたのかな。良くも悪くも、いつもお馴染みのあの強烈なフレーズ(勿論コピーした!)が毎回登場して、「A Train」のようなある意味素朴な曲をやっても完全にドルフィー印(この演奏、エレベーターの中で流れたら面白いなぁ…)。

例えば東京や横浜の高級ホテルの高層階で「お客様の居心地の良いひとときのために、ムーディーなジャズをなんとなく演奏してください」などとブッキング・エージェントに言われたとしたら、彼はどんな演奏をしたのだろう。というか、できたのか。

「それがジャズであることがわかるような演奏でありながらも、自分自身のアイデンティティを保ちちつ、しかし突出した個性を適度に消すような演奏」をするのは、相当な訓練とスキルが必要でしょうし、簡単なことではないと思うのですが、彼はそういう演奏ができただろうか。

この記事で何が書きたかったかというと、様々な要望に応じた演奏ができるということは大変なスキルであって、それを持っている方々は本当に尊敬するのですが、そうしたスキルを持ってないからといって音楽をあきらめたり、音楽家として自分を恥じる必要は少しもないはずだ、ということです。暮らしていくのは難しいとしても。

(余談ですが、エリック・ドルフィーの演奏がエレベーターの中やラーメン屋の中で日常的に流れる日もそう遠くないような気もしています。エリック・ドルフィー、さえも。)





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