脳内物質の働きを理解し、音楽生活に役立てる

Baba Shivというスタンフォード経営大学院の教授が、脳内物質とクリエイティビティについて面白いことを書いている記事を見つけました(Baba Shiv: How Do You Find Breakthrough Ideas?)。楽器の即興演奏や作曲といった音楽活動にも大いに役立ちそうな内容だったので、私なりの理解を交えて紹介します。

まず人間は次の2種類の神経回路によって支配されているそうです。

1. 「恐怖・怒り・不安」と「安静・リラックス」を両極に持つ回路(回路1)
2. 「退屈・無気力」と「覚醒・興奮」を両極に持つ回路(回路2)

自分の回路1がどちら側に振れているかはセロトニンという脳内物質によって決定される。セロトニンは、恐怖・怒り・不安といったストレスを和らげ安静をもたらす。回路2の状態は、ドーパミンによって決定される。ドーパミンは、退屈や無気力といった状態から、興奮状態へと脳を導く。図にするとこんな感じです。


脳内物質の働きを理解し、音楽生活に役立てる

「リラックスしながらも覚醒した(エネルギーに満ち溢れた)状態」を維持するのが理想的なのは既に明白ですが、そのためには高いレベルでセロトニンとドーパミンを分泌し続けるのが良いわけです。

ではどうやって高レベルのセロトニンとドーパミンを維持するか。まず睡眠が大事らしい。

  • 最低でも30分、理想的には2時間の深い睡眠を得られればセロトニンが増える
  • 故に就寝2時間前以内のアルコールは控える(アルコールは深い眠りを得られない)
  • 夕食は軽めにし就寝3〜4時間前までに済ませておく(消化活動は睡眠を妨げる)
  • 温かいお風呂やシャワーでリラックスした状態でベッドに入る
  • 明かりを消す。寝ながらスマホなどもってのほか

食事面での工夫も必要。

  • 朝食は高タンパクなものにする。タンパク質は容易にセロトニンとドーパミンへと変換される
  • カフェインはその時々の気分・心理状態をブーストするため、ポジティブな状態なら摂取し、ネガティブな状態なら摂取しない

おお、ということは朝は食べるとしても「米と味噌汁だけ」はダメで、肉や卵や魚のほうが大事らしい! これははじめて聞きました。仕事や学校に遅刻しそうになったらパンではなくステーキをくわえて走って行くべきなのですね。朝にプロテインを飲むのも良さそうです。

運動としては、有酸素運動が大事。心筋が速く動く時、セロトニンの産出を助けると考えられているペプチドが放出される。リラックスするには散歩や軽いジョギングが良いとよく言われますがこういうことなんですね。

他に注目すべきこととして、朝はセロトニンレベルが高いため、スケジュール作成や意思決定を行ったほうが良い。何故なら日中にかけてセロトニンレベルが低下すると、脳はストレス状態へ向かうため意思決定はより保守的なもの・現状維持的な方向に向かってしまうから。

「より良く・より速く・より強く」と自分にプレッシャーをかけてもブレークスルーや新しい発想は生まれない。これは回路1において「恐怖・怒り・不安」の極に追い込む行為で、良いことは何もない。この場合、脳は慣れ親しんだもの・安心を求め、間違いや失敗を恐れるだけになる。そしてこの領域はそもそも「新しい発想」とはあまり関係がない。

新しい発想を得るには、回路2に注目し、ドーパミンレベルを上げて脳を覚醒状態に持っていく必要がある。回路1でリラックス状態を得た上で、覚醒レベル・エネルギーレベルを上げていく。楽しんで、恐れずに挑戦する状態を作る。これはよく「快ストレス」と言われている状態だと思います。

自分自身の状態を理解して行動するのが大事。まずセロトニン・ドーパミンの量を増やすのは勿論、例えばセッションやライブ前にあまり調子が良くない時、何か不安がある時はコーヒーは飲まない方が良いということになります。反対に作曲していてどんどんアイデアが溢れてくるような時はコーヒーを飲む。作曲や新しいアイデアを育てる時も午後や夜より朝のほうが良さそう。

また、読んでいてセロトニンは楽器演奏のテクニック面と大きい関係があり、ドーパミンは即興演奏や作曲時のアイデアといったクリエイティブ面と大きい関係があるように思いました。脱力した状態で、自分に慣れ親しんだ運指で確実に弾くこと。同時に、良い意味で興奮・覚醒し、音楽的に新しい表現に挑戦していく。それを同時に行う。脳内物質の理解にはそのためのヒントがあると思いました。

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