補助輪はいつか外さないといけない - Nir Felder

独特のクロマティシズムと自在なインターバルに彩られた自由すぎるラインが魅力のニア・フェルダー。彼は自身のクロマティシズムにデバイス(それを生み出すための便利な法則・規則性)はない、と教則動画で語っていたのですが、やはりどのようにしてあのラインが出てくるのか気になる人は多いようです。

2ヶ月前のこのインタビューの最後で、僕はこのボックスでDドリアンは弾けるけど、どうしてもニアのようにはならないんだ…という我々一般人の悩みに対して、彼は次のように答えています。

うん、僕はボックス・ポジションで弾くプレイヤーでは全くないんだ。ボックスは一度も練習しなかった。弾き方を勉強している時、それはかなり不自然なものに思えたからね。だから、弦ごとに(音を)理解していったんだ。ギターのネック(指板)全体をひとつのものとして見ようとした。だって実際そうじゃないか、ボックスは後から発明されたものだ。単にネックを下位分割して部分部分で弾きやすくする方法で、それはそれでいいんだけど、永遠にそれに囚われていると、補助輪を付けっぱなしにするようなものだ。いつかその補助輪を外して、ネックをひとつのものとして見るべきだ。だって実際ひとつなんだから。

あとインターバルの件だけど、それも同じ話なんだ。僕は2度とか3度と呼ばれる一般的なインターバルも弾きたいし、もっとワイドなものも弾きたい。小さい短2度やクロマティックみたいなものも弾きたい。それは結局、大きい絵を見る、という哲学の産物なんだ。何もかもその中において、見る。正しい方法なんてないことを理解する。耳が違うふうに聴いたのならそう弾いていい、探検していい。僕はそういう面でクリエイティブであろうとしているし、楽しもうとしているよ。芸術としての音楽の価値や、そのシリアスな側面も僕は信じているけれど、楽しんでやれるのなら、シリアスな文脈にも応用できるたくさんのクールな可能性を引き出すことができるんだ。(だから)練習している時も楽しまないと。

一般にCAGED(ケイジド)と呼ばれる、指板を5分割する有名な考え方があります。フェルダーはそれをほとんど真面目にやらずに指板全体を理解し、見るようになったようです。このことは教則動画でも説明されていました(あの動画はすごく参考になります。今でも時々見ます)。

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CAGED自体は、別に悪くはないと個人的には思うんですよね。CAGEDでポジションを接続していくギタリストはたくさんいます。ジョー・パスもパット・マルティーノもそう。ベン・モンダーもCAGEDポジションでアルペジオを徹底的に理解する必要性を示唆していたりします。しかしニアの独特のラインを考える時、やはり普通の道を通らなかったからああいう結果になったのだろう、と思わされます。

ちなみに”CAGED”はオープンコードに由来する名称ですが、同時に「檻の中に閉じ込められた」という意味の単語にもなるところがなんとも示唆的です。

で、その檻の外に出る試みは、今からでも、誰でも挑戦できることだと思うんですね。具体的には弦1本だけを使って色々試してみる、その後は複数弦であらゆる経路で弾きたい音を辿っていく、という練習ですが、必ずしもフェルダーのような不思議ラインを目指していなくてもこれはものすごく効果があると思います。頭の体操、イヤートレーニング、運指の最適化、同時にやれるいい練習。

CAGEDは悪くないと思うと同時に、ギターの指板を、5つの小さい部分の集合ではなく、ひとつのものとして捉える、という発想には見過ごすべきでない真実が隠れているように思います。ニア・フェルダー、オズ・ノイ、アラン・ホールズワースのような不思議フレーズ、謎グルーヴに自分も至りたい、という人に限らず、少しづつ取り入れてみると良いことがあるのではないでしょうか。

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