稼ぐ愚者を優遇し、文化の担い手を冷遇するYouTubeに未来はあるか - ローガン・ポール事件を考える

「青木ヶ原樹海動画」等で世界中から批判を浴びたアメリカのスターユーチューバー、ローガン・ポール氏。樹海動画については反省の意を表し一時沈黙していたものの先日活動を再開。そしていきなりやらかしています。下の動画の冒頭では大量の皿を割り、池に毒を流して弱った魚に心臓マッサージ。事切れたネズミに電気ショック。何故か51万人が「いいね」している心が痛む内容です。

これがきっかけでYouTubeはポール氏の動画から「一時的に」広告を撤去することを発表(「恒久的に」でないのがポイント)。なおポール氏のYouTubeからの収益は月100万ドル(1億円)以上とも言われています。

YouTuber Creator Blogではこんな文章も発表されました。

一握りの人間の行動が、ファンと繋がったり活発なビジネスを行おうとしている99.9%の人々に影響を与えないようにすることが不可欠です…(中略)私達は表現の自由という考えを強く信じており、皆様の大多数はガイドラインを遵守し、大きく影響のある、相互接続されたコミュニティの一員であることを理解しているのを知っています。

Preventing Harm to the Broader YouTube Community

YouTube側のこの対応を歓迎する声はあるものの、何故「一時的」なのか、そもそもポール氏のチャンネルが削除されないのは何故かといった意見は根強くあります(現在change.orgではローガン・ポールのチャンネルを削除させよう、という署名活動が行われており、約60万人が賛同中。目標100万人)。そして当のポール氏、Twitterで「おーいみんな、これ署名しようぜ!」と煽っており、反応の色なしww

表現の自由…だと…?

私が強烈な違和感を覚えるのは、YouTubeブログの中の「私達は表現の自由という考えを強く信じている」という文言です。これはおかしな話です。何故ならローガン・ポール氏(と、彼のようなタイプのクリエイター)は「表現の自由」の名の下に保護されているのに、ポール氏ほどの「稼ぎ頭」ではないYouTuberたちは不当な扱いを受け、辛酸を嘗めさせられているからです。

動画の中で著作権フリーの曲や自作曲を弾くと権利侵害通告をよこして収益を横取りしようとする「著作権ゴロ」や、批評目的で音楽の一節を流すだけで同様に侵害通告をしてくる大手レコード会社などを放置し、「ピンク色のカーディガンの編み方解説」を何故か「不適切コンテンツ」として禁止する劣悪なアルゴリズムについて、YouTubeはずっと沈黙。しつこく問い合わせるとチャンネルが削除されることもあります。

YouTubeでの教育活動で生計を立てている・立てようとしているミュージシャンは世界中にいるものの、彼等はローガン・ポール氏や日本のヒカキン氏のような巨額な収入を得ているわけではない。それでいて文化の担い手である彼等は精度の悪いロボットによって苦しめられ、もともと決して多くはない収益をさらに減らされる憂き目にあっている。

一方で、ローガン・ポールのようなスター・ユーチューバーの動画は、一連の騒動もあってYouTubeの中の人も監視を続けている。つまりご丁寧に人間が対応しているのですが、YouTubeは数日前までポール氏の動画の収益化を止めなかったし、現在でも彼のチャンネルを削除しようとはしない。その理由が「表現の自由」。

いやいやいやいや。お金でしょう。ローガン・ポール氏が大金を稼ぐ金の卵だから手放したくない、ポール氏に代表されるようなコンテンツがYouTubeから減ったら儲からなくなる、それだけじゃないですか。

ローガン・ポールを支持する熱狂的なファンが膨大な数いることにも驚愕します。上で紹介した動画についても「これの何が問題なんだ」という声が多数コメント欄で見られます。批判する者は「嫌なら見るな」と攻撃されています。これは人間の悪い部分を刺激して、そこに火を付けちゃった感じですよ。

皿を割ったり、動物をいじめたり、電動ノコギリで配達員をおどかしたり、金塊を買ってみたりするような扇情的な動画をアップするユーチューバーは大人気。そして子どもたちは大人になったら彼等のようになりたい、と考える。破壊と費消を見せつけることで大金を稼ぎたいと考えている。YouTubeが結果的に推しているのはこういうクリエイター。どんなソドムですかw

一方で、このスケールとコードを使うとこういうサウンドが生まれるんですよ、と丁寧に音楽創造を解説するユーチューバーは冷遇されています。生み出すことは破壊することよりずっと難しいし、価値があることなのに。YouTubeは、資本主義的には大成功を収めているのかもしれないけれど、文化的には完全な敗北でしょう。グーグルの社是「邪悪なことはするな(Don’t be evil)」は何処に消えたのか。

FacebookとAmazonがこれからYouTube的な動画配信サービスに力を入れるそうなので、そういう競合環境の中でYouTubeは今後改善していけるのか、生き残れるのかに注目です。モノを壊すのを見て子供が喜ぶからといって、そんな動画ばかり垂れ流している人間が「やりたいことで、生きていく」などと抜かしている世界はどう考えても間違っているでしょう。

まぁ、このブログもそろそろネットから消されるかもしれないな…まあそれもいいや、オヤジ、酒くれ!





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