自分が自分であることに誇りを持てない不幸 :日本人コンプレックス雑感

日本人にはジャズはできない、みたいな言説をよく見聞きします。私が大学のサークルでジャズを勉強しはじめた頃から耳にしているので、大昔から言われていることなのでしょう。日本人は、身体能力的にも感性的にも欧米の白人・黒人に比べて生来的に劣っているのであり、良い音楽をやることは最終的にはできないのだ、と、どうしても言いたい人々が、昔から存在していたようだし、現在でも存在します。

ジャコすげぇよな、マイルスすげぇよな、エルヴィンのシンバルとかよ…もうなんか日本人とスペック違うんじゃね?

みたいなことをみんな普通に言っていました。

仲の良いアメリカ人の友達がいます。ギタリストの彼は、生まれも育ちもテキサス州で、先祖はドイツから渡米してきた。アメリカ人としてはかなり多い出自です。頭も良く、トランプ支持者や人種差別するような人間を見下しているところがあります。多様な価値観と自由を認める、常識人でありたい、と彼は考えているらしい。大統領選挙ではオバマとヒラリーに投票した。

そんな彼は、自分がアメリカ人であることを誇りに思う、と堂々と言います。アメリカ人であることを恥じたことは一度もないそうです。小学校では毎朝、星条旗が掲揚され、それを見るたびにアメリカ人であることを誇りに思ったそうです。あと、ロシア人のことは基本的にバカだと思っている。何故なら、旧ソビエトとは自由の敵であり、アメリカの価値観と反するから。そのような教育を受けてきたから。

日本人である私は、中学・高校の先生から、日本人であることは罪深いことであり、恥ずかしいことでもある、と暗示的にも、明示的にも教えられてきた記憶があります。日本人は、戦争で多くのアジア人の命を奪った。近隣諸国を植民地化した。我々は中国や韓国の方々に、頭が上がらないのだ。ごめんなさいしなきゃ。そして、我々に過ちを諭してくれたのは、アメリカ合衆国なのだとも、暗に教わりました。

日本では今でも、学校で国旗を掲揚することの是非、国歌を斉唱することの是非が問われます。日本国の国旗や国歌は過去の軍国主義と切っても切り離せないものだから、そんなものを信奉するのはけしからん、という意見があります。

私は現在、自分を右翼とも左翼とも思っていませんが、大学生の頃まではずっと左派だったと思います。大江健三郎とか高橋源一郎のような左派の作家・思想家は、私達のアイドルのようなものでした。お世話になった教授たちも、みんなバリバリの左翼でした。

ある日、大学を卒業してからのこと。お世話になった先生と酒を飲んでいる時、その先生が天皇陛下の批判を口にしはじめました。具体的にどんなことをおっしゃったのかは覚えていませんが、悪口だったのは覚えています。

その時、私は妙な違和感にとらわれ、言いました。

でも、先生。誰だって自分が何に生まれるか、選べないじゃないですか。昭和天皇は、それは間違ったことをたくさんしたでしょう。でも平成天皇は、天皇家に生まれたくて生まれたわけでは、ないでしょう。子供は、親を選べないじゃないですか。でも、彼は天皇家に生まれた宿命を背負って、いろいろ真面目に仕事されているではないですか。福島に行って、人々に労いの言葉をかけられているじゃないですか。何故彼は、責められなければならないのでしょうか。

先生は、ちょっとびっくりしていたのを覚えています。学生時代はどう考えても左側だった教え子が、何か天皇擁護みたいなことを言っていることに驚いたのでしょう。ふーん、そうか、そういう考え方も、あるのかな、と、少し不服そうにおっしゃっていました。

その先生は、もう亡くなってしまったのですが、ジャズが大好きで、私にオスカー・ピーターソンとデクスター・ゴードンのCDをくれたりもしました。私はものすごく可愛がってもらい、卒業後もたまに呼び出されて一緒にお酒を飲みました。そして、残念なことに、先生と私は、会うたびに意見がすれ違うようになっていったのを覚えています。

それから何年が経ったのか、数えていませんが、テレビでも、インターネットでも、日本が嫌いな日本人が、いまたくさんいます。日本人であることを恥じている日本人がたくさんいる。「君が代」という曲は、機能和声から遠い、モーダルでいい雰囲気の曲だな、と思うのですが、歌詞がヤバい、みたいな理由で毛嫌いする人がいる。国旗は恥ずかしいものだと思っている人がいる。

日本人は、自分が自分であることに誇りを持つことは許されないのだ。そのように教育されて育ってきた日本人が、所詮日本人にはジャズなんかムリ、みたいなことを言う。俺達はダメなんだ。黒人とは筋肉のバネが違う。白人には体力で勝てない。日本人はスウィングできない。盆踊りにしかならない。本物はアメリカに、ニューヨークにしかない。そういうことを言う。俺達は全部、偽物だ。

そして自由を求めて努力する仲間の足を引っ張り、引きずり降ろそうとする。GHQというのは本当にうまいことやったな、と思います。日本という国は、やばかった。唯一アメリカ本土を攻撃しようとした国だったから、徹底的に叩いて去勢しないといけない。そういう危機感を持っていた。結果、アンダーコントロールである。日本人にはジャズ無理、という人を大量に生み出した。今でもそういう人間を量産している。

アメリカという国は、本当にすごい。





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