ジャズを学ぶ学生にとっての最大の障壁は何か。マイク・モレノ「音楽学校だ」

ジャズを学んでいる学生にとって障壁となっているものは何ですか、という問いに対し、マイク・モレノは次のように答えています(22:41〜)。かなり真面目なお話です。

僕は、スクール(音楽学校)が主な障壁になっていると思う。大部分の人々はスクールが何のためにあるかを理解していないと思う。

僕にとってスクールは常に、自分と同じパッションを持った人たちと時間をすごすために足を運ぶ場所だった。音楽をどのように演奏するかを学びに行ったのではない。音楽演奏は、クラブで学んだり、自宅で学んだりするものだ。音楽を聴きながらね。

学校に行けば先生たちから、その先生たちもプロのミュージシャンだといいんだけど、たくさんの情報を受け取ることができる。彼らは君をガイドできるかもしれない、しかし「ハウ・トゥ・プレイ」は決して教えられないんだ。だから学校というのは、何かを共有するようなコミュニティに近い。学校というのはコミュニティに関係があるんだ。

大部分のジャズの学生が理解していないのは、学校に行っても演奏方法は学べないということだ。だから彼らは、学校で何もかも与えてもらえないと決してプレイできるようにはならない。そして、そういうことは現実には起こらない。

10年間も音楽を勉強してきた学生で、いまだに学校の最初の2週間で覚えた同じ曲を弾いている人がいる。彼らは決して、決して自分は次に何をすべきかを考えない。なぜなら彼らは、何をしたら良いのか、誰かが言ってくれるのを待っているからだ。だから彼らは何処にもたどりつけない。

音楽がそんな感じでうまく行ったことはかつて一度もなかった。だから学校にいる人はみんな同じようなサウンドだし、オリジナルなアイディアを持っている人などいないし、みな同じ曲ばかり弾いている。みんな同じようにサウンドしている。学校の外で何かを学んでいる人間は一人としてしない。学校の問題点はそれだ。

何年も、何年も何年もジャズ・シーンに学校はなかった。ジャズはもっとずっと情熱的で、もっと自然で、もっとユニークなものだったんだ。でも今では学校がたくさんあって、みんな同じようなサウンドだ。誰も何処にもたどりつけなくなっている。

相変わらず直截的な表現で、最近の日本のSNSでこういう発言をしようものなら「全員がそうじゃないだろ」とか「決してとか絶対にとか決めつけるな」という感じのいわゆるクソリプが大量発生して炎上御礼になりそうですが、私はマイク・モレノの気持ちがよくわかるような気がしました。

マイク・モレノは奨学金を得てニュースクールで学びましたが、学校の最大の役割はネットワーキングだったそうです。実際同期だったロバート・グラスパーやケンドリック・スコットは盟友です。またレッスンでウェイン・ショーターをやる、と聞くと、彼は「何を教えてくれるのだろう?」と受け身でレッスンに行くのではなく、自宅でショーターの曲を採譜して、先生、この曲をやりたいんです、と伝えたとのこと。

YouTubeにも、書籍にも無数の”How to play…”コンテンツがあります。多くの人は、自分の疑問に対して他人がすぐに答えを与えてくれるのが当然と考える世界になりました。自分で何かを考えたり、時間をかけて一緒に成長しようという気持ちを持つ人は、もうほとんどいないのかもしれません。

かなり前にJazz Guitar Forumで、マイク・モレノはどんなボイシングを使っているのでしょう、という質問をされた方がいて、具体的にこんなボイシング、という話ではなく、マイクはボイシングのことをこう考えているようですよ、とお返事したことがあるのですが、それはやはり、何のお返事もなかったな(笑)。便利な答えではなかったのでしょう。

日本のスクールのことを考えてみると、モレノ親方が言っているのとは反対に「ガイドしてはくれないけれど何を弾けばいいのかは教えてくれる」先生は多いと思います。これは私の主観で、最近は事情が違うのかもしれませんが、ヒントを与えて導いてくれるよりも、いいからこれをやりなさい、というパターンが多かった(というか大部分がそのパターンだったので、習ってもダメなんだ、と思うようになった)。

多分、日本に限らず、世界中でそういう「答えを消費する」スタイルのほうが、人気がある。需要がある。だから何も弾けるようにならないんだよ、というのがモレノ氏の意見。これは同感せざるを得ない内容でした。





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