エミリー・レムラー、パット・マルティーノについて語る

ミュージシャンの内面や思想に関する、少し情緒的な記事です。

エミリー・レムラーというギタリストがいます。1990年に32歳の若さで亡くなったのですが、そのプレイにはウェスやパット・マルティーノのヴァイブが強く感じられる人でした。彼女自身、マルティーノに学んだそうです。そしてビバップの進化を担うギタリストの1人とも言えるシェリル・ベイリー氏はレムラー氏に師事したとも聞きます。

そのエミリー・レミラーはパット・マルティーノについて次のように語っています。

(パット・マルティーノについて)多くの人が言うだろうことと違うことを言おうと思います、彼のソウル(魂)は信じがたいほどすごいものです、私は彼のソウルを感じます、多くの人々は彼のテクニックについて語るでしょう、彼のテクニックはものすごいし、確かに私も驚嘆させられます、でも私は彼から本当のソウルを感じるのです、彼がギターで弾くブルージーなもののことだけではありません、私は彼の音楽を聴くとき、ただただ本当に温かいフィーリングを感じるんです。彼の音楽には多くの苦しみ(pain)や、多くの哀れみ(compassion)を感じます。彼の音楽を聴いていると、パットを知る前から彼のことを知っていたかのような気持ちになりました。

私はあまり謎めいたことを言うのは好きではありません、でもさっき言ったようようなフィーリングなんです、ソウルについて私が語ったようなフィーリング、暖かさや、彼が音楽とともにそこからやってきたような暗い場所(dark place)、そして勿論、コードやメロディーはその全てですが、あと彼がスウィングするということ…彼のタイムは素晴らしいです、彼は正確だし、思いやりがあって、彼はそういう感じの人です、深くて、エモーショナルで、たくさんのパッションがある…

私は、音楽それ自体は何の意味も持っていないと個人的には思っています。また、感情を表現する、とか、感情をこめて演奏する、という表現にも若干違和感を持っているのですが、反対に、聴く側に回る時は本当に様々な感情を音楽によって喚起されます。そしてパット・マルティーノの音楽を聴く時に私が感じる「フィーリング」は、エミリー・レムラーが言っているものにかなり近いことを知って驚いたのでした。

インタビュー中の「暗い場所(dark place)」という表現は、かなり謎めいている部分なのですが、これもよくわかるような気がします(勿論エミリー・レムラーが”dark”という言葉で表現しているものと、私にとっての”dark”が同じである保証は全くないのですが)。しかし彼女はなぜこんな不思議な言葉をこともなげに口にできるのか…

私自身が本当によく聴いたパット・マルティーノの録音は”The Visit!”と”Consciousness”、そして”Exit”なのですが、これらは本当に”dark”なアルバム、暗い音楽だったと今でも思います。マイナー系スケールで全てを弾く人だから、ということだけでは説明がつかないような、不思議な暗さです。本当に感動的で胸を打たれるフレーズがたくさん出てきます。同時に、ぞっとするような暗さも感じました。

旧約聖書の創世記を思い出しました。

初めに、神は天と地を創った。地はかたちがなく、空っぽであり、闇(darkness)が深いものの表面を覆っており、神の霊が水の上を漂っていた。そして神は言った、「光あれ」。すると光があった。神は光を良きものとみなし、光を闇から切り離した。神は光を「昼」と呼び、闇を「夜」と呼んだ。そして宵が来て、朝が来た。これが最初の日であった。

パット・マルティーノはこのインタビューで、昼が好きだからといって夜をなくしてしまうわけにはいかないだろう、と言っていました。エミリー・レムラーがマルティーノについて口にした「暗い場所」というのは、創世記に書かれているような、何かが生まれるところなのでしょうか。最初、光はなく、まず闇があったらしい。なんとも示唆的に思えます。





エミリー・レムラー、パット・マルティーノについて語る
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