リアルブック誕生秘話 スティーヴ・スワロウ語る

数日前に公開されたばかりのスティーヴ・スワロウとジョン・スコフィールドへのインタビュー動画(2018年2月収録)で、スティーヴ・スワロウがリアルブック(フェイクブック)誕生の経緯を語っています。

(22:36) 2人の男がバークリーにいたんだ、1970年代中頃に。名前は言わないよ(笑) 彼らは学費を工面するためにそのアイデアを思いついたんだ。それで計画の初期段階で私のところに来て、私の曲を使ってもいいかと聞いてきた。

(ジョン・スコフィールド)一瞬いいかな、それはフェイクブックっていう違法なものだったんだ、リードシートが載っているやつ、アンダーグラウンドで出版されて、楽器屋の駐車場でクルマのトランクから取り出して売る奴がいる感じの。学生たちが曲を書き出して、ゼロックスコピーしたんだ。

(スワロウ)その通り、それでその2人が私の曲を使ってもいいかと聞いてきて、私は著作権や印税の問題に直面することになった、なぜなら彼らが印税を払う仕組みを持っていないのは明白だったからね、それで数日考えた結果、やることにした、私にとって大切だったのは、私の曲を弾きたいという人々に開放することだったし、しまいにはこうも考えた、それを印刷して利用可能にすることで結果的には収益も得られるだろうと。私の曲を弾く連中が成長してそれを録音してくれたらそういうかたちでお金をもらえる、と。実際そうなった、結果的には賢明な経済上の決断だったんだが、倫理的な面でも考えた、私は本当に自分の曲を利用可能なものにしたかったんだ。

その2人のリクエストに応じて、私はカーラ・ブレイやスティーヴ・キューン、他数人に連絡を取って、事情を説明し、その本に自分の曲を載せたいかどうか聞いた。彼らは載せることに決めて、私同様たくさんのリードシートを提供した。私はプルーフリードの手伝いもして、あの2人に”Here’s That Rainy Day”へのジム・ホールのチェンジを提供した。私は良いことをしていると思っていた。私があの本に関係したのはそんなところだ。(…)

(26:28)(しかし)皮肉なことに、あの本が世に出るとすぐ、他の人達が気付いてしまった。自分がそれをコピーして売れるじゃないか、と。それで最初の2人の男は頑張って苦労して全部編集したのに、思ったより儲からなかったんだ、リアルブックのイミテーションが直後に出てしまったからね。

リアルブックには間違ったコード進行がたくさんあって、不完全なものだったが、それ以前に存在していたものに比べるとはるかに正確で、読みやすかった。そしてあの本の効能はすぐにわかった、私はバークリーの自室に行く時、練習室の前を通る必要があったんだが、ほとんど1夜にしてだよ、突然、”My Romance”の正しいコード進行とか、”My Romance”のビル・エヴァンス風コード進行などが練習室から聴こえてくるようになったんだ、それ以前は廊下を歩いていると閉じた扉の向こうから20個の間違ったコードをカウントできるほどだったのに。

この後スティーヴ・スワロウは、リアルブック登場の頃に「耳で覚える慣習」がやや失われはじめ、読譜能力が重要視されるようになってきた、とも語っています。個人的には、これはイヤートレーニング上でのマイナス面と、コピーされた大量の印刷物が流通することで多くのジャズプレイヤーが育つというプラスの面、両方あったのかなと思います。

ところでこの本は「リアルブック」なのか「フェイクブック」なのか。これは結局のところ未だに謎らしく、語源もはっきりしないらしいのですが、なぜ「リアルブック」と呼ばれるようになったかについてはジョン・スコフィールドが29:58〜で自説を紹介しています。

リアルペーパー(Real Paper)っていうの覚えてるかい、ボストンのアンダーグラウンド新聞。この意見は完全に間違っているかもしれないんだけど、あの本はリアルペーパーに似ていた、書体とか。それに由来しているんじゃないかと思っていたけど、でもあまり説得力ないか、違うか…

ジョン・スコフィールドが言及しているボストンのアングラ新聞「リアルペーパー」は、こんな雰囲気だったようです。(Wikipedia The Real Paperより)。確かになんとなく似た雰囲気は感じます。

リアルブック誕生秘話 スティーヴ・スワロウ語る

リアルブック誕生秘話 スティーヴ・スワロウ語る

日本ではリードシートの確認に「黒本」が使われることが多いですが、曲を覚える際は過去のいくつかの名演にあたり、あわせてリアルブックもチェックするのが良いと思います。分厚い本で数冊ありますが、最近はKindle版も出ているので便利になりました(私は紙とKindle版両方持っていますが、Kindle版のほうが何故か高いのが悔しい…)。

それにしてもリアルブックにこんな歴史があったとは。面白いですね。ところでこれを考えた2人の男は、結局バークリーの学費を払うことはできたのか。ちょっと気になります。





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