ソニー・ロリンズの練習は「音楽の女神」との交信でもあった

ソニー・ロリンズというとモチーフの展開、テーマの発展能力の凄さのことを思うのですが、彼は一体どんな練習をしてきたのか。これは私達ギタリストにとっても興味をそそられる話題です。Jazz Timesでのジョシュア・レッドマンとのインタビューでロリンズは次のように答えています。

JR: その頃(20歳前後の若い頃)あなたは練習する時、どんなことを練習していたんですか? テクニックなのか、音色なのか、それとも曲を練習していたんですか?

SR: サックスの教本のことを覚えているよ、Ben Vereeckenの本を持っていた。当時とても有名な本だったんだ。だが何を練習していたかについて言えば、私は常に「意識の流れ」系のプレイヤーだった、一人で何時間も演奏していたんだ。私がいわゆるフリーのプレイヤーと馬が合うのはそのせいだと思う。彼らが私に好意を持つのも私がある種フリーのプレイヤーだからなんだよ、本当は。私がやりたいことは本当はそこにあると思う。

JR: 僕があなたから本当に学んだことの1つは、インプロヴァイザーとしてのフローと語りのセンスでした。あなたは完全に自発的に演奏できた ーあなたは「意識の流れ」と言いましたがー しかし同時にあなたの即興には信じられないような構造とエモーショナルなロジック、それらを組織化するセンスがありました。あなたはテマティックな(=テーマを発展させるような)インプロヴァイザーだと言われているのをご存知だと思います。こういうことは意識したことがあったのでしょうか?

SR: いや、そんなことは本当に全く考えたことがないよ、ジョシュア。私はいま言っていること以上のことを考えたことはない。プレイヤーには、いままさにプレイしようとしているものをじっくり考える時間はない、あまりに速くそれは起こるからね。私の演奏にロジックがあるとするなら、そういう才能に恵まれていたからだ、そういうことは本当に考えたことがないからね。

Sonny Rollins Interviewed by Joshua Redman

テマティックなソロなんて考えたことがないよ、センス、才能だよ!と言われてしまうと話が終わってしまうのですが、私が注目したのは「意識の流れ」(stream of consciousness)という言葉です。ここにロリンズの音楽の秘密があるように感じたのでした。

別のインタビューで彼は次のようにも言っています。

私はソロを取るのが好きだ。母親に最初のサックスを与えてもらった時からそうなんだ、7歳の頃に。私はサックスを手に寝室に行って、プレイしはじめた ーそれだけだ。私は第七天国にいた。母は「晩ごはんの時間だから出てきなさい」と呼びに来ないといけなかった。私は永遠にそこにいられたよ。一人でプレイするのが好きなんだ。私は練習していたのだが、私の音楽神(musical muse)と交信してもいたんだ。

Sonny Rollins on the Way of “Way Out West”

ソニー・ロリンズが少年・青年だった頃、当然ながらメロディの展開に関するシステマティックな教則本など今ほどはなかったでしょうし、そういう練習は主流でもなかったのでしょう。ロリンズのような巧みなテマティック・ソロを取りたいと考える多くの現代人は、音価の付加や引き算、インバージョンといった方法論を頼りに練習することがあると思うのですが、彼の練習はそういうものではなかったらしい。

私は自分の音楽神との交信していたんだ、という言葉におおっ、と思いました。これは、全く同じ話ではないのですが、メアリー・ハルヴァーソンが言っていた「深さのある練習」と関連するところがあるように思いました。

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マイク・モレノは、何時間も練習することが大事なんじゃない、短い時間でも批評的に練習するのが大切なんだ、と言っていました。そういう練習も重要だと思うのですが、それとは別に、若い頃のロリンズのように何時間もとにかく自分の底に降りていくような感じで演奏しつづける、ということをすると、何か特殊な能力が開発されるのではなかろうか、と最近思います。それは下の記事とも関係があるように思います。

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たまにではあっても、4時間、6時間、8時間と、ミューズと交信するような楽器演奏をやってみる。どっぷり浸かる。これはすごく良い効果があるように思います。





ソニー・ロリンズの練習は「音楽の女神」との交信でもあった
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