情のトランプ、知のオバマ

ドラマーのアントニオ・サンチェスが、9/11(アメリカ同時多発テロ事件)についてのドナルド・トランプとバラク・オバマ両氏のツイートを比較して、「同じ事柄に対する、微妙に違うアプローチ」(Slightly different approach to the same thing)と揶揄していました。メキシコ出身のサンチェス氏、トランプ大統領への憤りを一時たりとも隠しません。取り上げられていたのは、この2つのツイートの違い。

トランプ: 9/11から17年!

オバマ: 我々は9/11に失った1人1人を忘れまい、我々を安全にしてくれる第一応答者に感謝し、この国と、我々を1つに束ねる様々な理想とを擁護する人々全てに、敬意を払い続けるだろう。立ち直ろうとする我々の力と決意が克服できぬものなど何もない、そしていかなるテロ行為も我々を変えることなど決してできぬ。

ソウルの女王、アレサ・フランクリンが亡くなった際も、この2人のツイートが比較され大きく話題になりました。

トランプ: ソウルの女王、アレサ・フランクリンが、亡くなった。彼女は神から素晴らしい声を贈られた、グレートな女性だった。寂しくなるよ!

オバマ: アレサはアメリカン・エクスペリエンス(アメリカで生きること)の定義に貢献してくれた。彼女の声に、我々は自分達の歴史を、その全てを、あらゆる陰影 ー 我々の力と我々の苦痛、我々の闇と我々の光、我々の贖罪への模索と、我々が苦労の末に得た尊敬 ー の中で感じることができた。ソウルの女王が永遠の平和に休息されんことを。

語りのスタイルがまったく違う2人です。多くの人々は、世界的な不況も手伝ってか、辛抱強さを失い、簡潔で直接的なものを好むようになった。こういう長そうなブログ記事なども、冒頭に「ざっくり言うと」などといった親切な見出しを置いておかないと、読まれないことが多い。そういう状況では、トランプ氏を支持する人が多くてもあまり驚きません。

話が長いと、要点をまず言え、などと言われたりします。効率よくやれ。能書きはいい、結果を出せ。理想はいい、現実だ。細かい表現はいい、踊らせろ。3年後じゃない、今だ。

何か映画「バード」で見たビバップの衰退の時期を思い出します(チャーリー・パーカーがR&Bの台頭にガクッと肩を落としていた姿が目に浮かびます)。音楽における「感性と理論」の対立にも似ているような気がします。人々は、地道に何かを積み上げることに疲れているのか…

ドナルド・トランプのフレージングは、ぱっと見た感じ、ジム・ホールのそれに似ているような気もします。でもジム・ホールはオバマのように語ることもできる。それにトランプの語りは、大脳辺縁系を鷲掴みはするものの、美しさはない。わかりやすいけれど美しくはない。そこは大きい違い。

時々思うのですが、オバマ氏がドナルド・トランプ的なフレージングのスキルを獲得して(というか、既に持っているとは思うのですが)戦略的に使い分けられたら、かなり強力な大統領になれるんじゃないか。

その逆はどうだろう。トランプ大統領が、頭の中は今と同じままで、オバマ的なスタイルで語るようになったら。その時はかなりヤバい。そんな時が来たら、世界はガチで存亡の危機に瀕しているに違いない(既に瀕しているという話もありますが…)。

リツイート数だけ見ると、オバマ元大統領のツイートのほうが人気。でもかりにいま大統領選があってこの2人が戦うとしたら、どちらが勝つだろうか。私が米国人だったら、勿論オバマに投票するけれど、最終的にトランプが勝ってしまいそうな気がしています。この世界に希望は、明日はあるのかーー





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