カッコいい演奏は、いつも何かがズレている

自分がカッコいいと思う演奏は、ほとんどの場合、何かがズレています。たとえばフレーズの開始点が、普通とはズレている。「そういうフレーズは、1拍目の裏の8分音符からはじまることが多いのに、1拍半休んで2拍目のウラから入った」。それで、そういう効果を狙って、即席でこしらえたフレーズを、音高も音価もそっくりそのまま、開始点だけズラして弾く練習をしてみる。

これはリズミック・ディスプレイスメントの話。でも、「ディスプレイスメント」(ずらし)にはリズム以外の種類もあります。

自分がカッコいいと思う演奏をコピーしていると、フレーズが4拍おきや2拍おきに変化するコード進行とは、ズレていることがあります。わけのわからないアウトした音がたくさん鳴っている。いったいなぜそのコードでその音使いが可能なのか、分析できない。しかしそのフレーズは、やがて後続のコードと出会った時、魔法のようにストンと落ちる。

そういうのは、プレイヤーが小節線を超えて、ハーモニーを先取りしたり、引き伸ばしたりしているからであることに、ようやく気づく。

イェンス・ラーセン氏の上の最新動画は、パット・メセニーのそういう「小節線を超える表現」のことなどを説明しています。やっぱりカッコいい演奏にはこういうズレがある。ちなみに、この”I can see your home from here”というBbブルースはジョン・スコフィールドとの共演で、ラーセン氏によるジョンスコの演奏解説ついては下記事で紹介してあります。

ジョン・スコフィールドと歌えないラインの魅力
デンマーク出身で現在はオランダに活動拠点を置くギタリスト、イェンス・ラーセン氏。YouTubeに10分前後のレッスン動画を精力的にアップされ...

こんなふうに、バッググラウンドで流れるコード進行に支配されず、自分がハーモニーを決定していくことの重要性は、多くのギタリストが口にしているような気がします(マイク・モレノもちょっと違う文脈で触れていた)。

カッコいいな、と思うものは、何かズレていたりする。リズミック・ディスプレイスメントもそう。そして「小節線を超える表現」。これは、そういう言い方は聞いたことがないけれど、「ハーモニック・ディスプレイスメント」と言っても良いのだろうか。

ちょっとググってみよう。Harmonic displacement.うん、やっぱりそんな言葉は存在しないようだ。

“Playing over the bar line”で検索すると、外国のサイトがたくさんヒットします。

それで、自分でもこういう練習をしてみます。いろいろズラします。フレーズの開始点をズラす。着地点をズラす。コードが切り替わるタイミングをズラす。音を1オクターブ、ズラす(オクターブ・ディスプレイスメント)。

そうそう、オクターブ・ディスプレイスメントといえば、オズ・ノイも教則動画で紹介していたけれど、Jazz Duets氏も先月この動画で紹介していました。

何でもいいからあるスケールを用意する。そのスケールを上っていく。ただし、1つおきに音を1オクターブ上げる、という練習法。メジャースケールでこれをやると、結果的にM9とb9とM7とb7のインターバルが出てくる。楽しい練習だ! 慣れたら下降もやります。

そんなふうに、いろんなものをズラして、アドリブ練習してみます。そして、自分の演奏をICレコーダーで録音します。

Coffee cup, IC recorder

でもここで、うーむ、と顎を撫でることになります。なんか…なんか、カッコよくない。何かをズラした俺の演奏は、あんまりカッコよくないぞ。なぜだ。

そして気付かされます。俺はリズムが悪いのだと。何かをズラした表現が成功するのは、リズムが本当に良い時だけなのだと。何かちょっとでも指が動かなかったり、迷いがあったりしてポケットを外していると、全然サマにならない。

というわけで、ちょっとズレた表現を目指せば目指すほど、リズムにキレがないといけないことに気付かされます。これは逆を言うと、小節線を超えない表現、コードネームの変化に合わせて律儀に音の選択を変えていく演奏をしていれば、ハーモニーがある程度リズムの弱さをカバーしてくれる、ということなのでしょう。

だから、そういう演奏ばかりしていると、リズムもあまり磨きがかからないのかもしれないな、と思ったのでした。

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カッコいい演奏は、いつも何かがズレている
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