日本のジャムセッションでモーダル以降の曲があまりコールされない不思議

海外掲示板Redditに日本のジャズシーンはどんな感じ? という投稿(1年前)があり、おもしろいことが書かれていたのでご紹介。

日本のジャズシーンに興味があるんだけど、あまり情報がない。日本のことは何も知らないけど、日本のジャズのグループにはすごいのがいっぱいあるね。日本のジャズシーンは大きい? どんな感じ?

という質問に対し、こんな回答が。

大きいよ。でも保守的だ。ブルーノートレーベルの1945年から1959年頃のハードバップ的なサウンドでよければ、だいたいあちこちで聴ける。もっとユニークでオリジナルなサウンドに興味があるなら、ほとんどは東京だね、海外でピックアップされるようなグループの大部分は恐らく東京で生まれている。

回答されているのは大阪在住のミュージシャンの方らしいのですが、彼は次のように続けています。これがちょっと興味深い。

アメリカでは1960年代のハービー・ハンコックやウェイン・ショーター、フレディ・ハバードといったモーダル、ポストモーダルの名曲はどれも今ではジャズ・スタンダードで、僕たちは音楽学校でそれらによく取り組む。でもここでは、そういう曲はジャムセッションでは決して上がってこない(「カンタループ・アイランド」のようなファンキーなものは例外として)。

ギグで誰かがショーターの曲をコールすることはあるかもしれないが、それはケニー・ウィーラーの曲がコールされるのと同じような、特殊な感じがする。でもオーディエンスは(少なくとも東京以外ではだいたいそうだけど)、”Cool Struttin'”, “Cookin'”, “Workin'”からのレパートリーに期待してやってくる。

ミュージシャンたちを非難するつもりはない、”I Could Write A Book”と同じくらい”Falling Grace”をプレイするのが好きだという良いミュージシャンがたくさんいる。でもそういうものに興味を持つ会場やオーディエンスを探すのは本当に難しい。

Wayne Shorter in 2006.

Wayne Shorter Author:Tom Beetz License:CC BY 2.0

ある程度世界共通だとは思うのですが、確かにジャムセッションでハービー・ハンコックの”Dolphin Dance”やウェイン・ショーターの”Witch Hunt”がコールされることは少ないですよね。そういう曲をガンガンやりたいと思ったら、セッション以外の場所になることが多いと思います。勿論「今夜はモーダルジャズ特集」みたいなセッションはあると思いますが、普通はあまりコールされない。

枯葉、ステラ、酒バラ、アナザーユー、スペイン、チキン、フィールライク。といった定番の曲は、それはそれで皆好きなのだから良いとして、セッションで演奏される曲がケイデンスの明確なスタンダードソングやジャズファンク系の曲に偏っている傾向は確かにあるなと思ったのでした。何年か前に、なぜかカーラ・ブレイの”Lawns”が流行ってましたが彼女の他の曲がコールされることは絶対にない(笑)。

それ以外のジャンルの曲は「難しい」からなのか。ウェイン・ショーターの曲は、たしかに簡単ではないと思うけれど、でも、もっとコールされるようになっても良いような気もします。

よく考えると、モーダル・ジャズは不思議なものです。今更何言ってんだ、と言われそうですが、テレビから流れてくるアイドルの歌、映画の主題歌、人気ロックバンドの歌、いきなりステーキで流れているバップ・ハードバップもケイデンスが明確な調性音楽がほとんど。

モーダルな音楽やミニマリスティックな音楽が主流にならなかった背景には何があるんだろう。「ゆで太郎」でスティーヴ・ライヒが流れていないのはなぜなのか。

ショーターのモーダルなアルバムには、機能和声のケイデンス要素は少なくても、ダイナミクスの強弱とか間の取り方といった方面にやはりテンションとリリースがあって、それがまたすごく刺激的です。





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